鬱蒼と茂る暗緑の樹々
不気味な鳥の鳴き声
ある人里離れた森に
その赤ん坊は捨てられていた
幸か不幸か 人目を憚るように
捨てられていたその子を拾ったのは
王国を追われた隻眼の魔女
『深紅の魔女と謳われた(クリムゾンの)』
オルドローズ
銀色の髪に緋色の瞳 雪のように白い肌
拾われた赤ん坊は いつしか
背筋が凍る程美しい娘へと育った
流転こそ万物の基本
流れる以上時もまた然り
二つの楽園を巡る物語は
人知れず幕を開ける
悔しい…出してくれ…助けてくれ…
「ラフレンツェや
忘れてはいけないよ」
銀色の髪を風になびかせて
祈るラフレンツェ 死者の為に
小さな唇が奏でる
『鎮魂歌(レクイエム)』
歌えラフレンツェ
『永遠(とわ)』に響け
時を喰らう『大蛇(セルペンス)』
灼けた鎖の『追走曲(カノン)』
狂い咲いた『曼珠沙華(リコリス)』
還れない『楽園(Elysion)』
蝋燭が消えれば
渡れない川がある
始まりも忘れて
終わらない虚空を抱く
…助けてくれ…
「『亡者どもの声(Creature's Voice)』
――オノレラフレンツェ」
悲痛な叫びの
『不響和音(Harmony)』
「『尽きせぬ渇望(Unsatisfied)』
――ニクキラフレンツェ」
呪怨の焔は燃ゆる