水中メガネで記憶へ滑ろう
蒼くて涼しい水槽の部屋
あなたの視線に 飽きられちゃったね
去年は裸で泳いでたのに
泣きながら鏡の前で踊る
ゆらりゆらり俄か雨
水中メガネをつけたら わたしは男の子
微かな潮騒 空耳なのかな
無言の会話がきしむ音かな
あなたは無視して漫画にくすくす
わたしは孤独に泳ぎだしそう
熱帯の魚と じゃれるように
暑い暑い夏の夜
心はこんなに冷たい
わたしは男の子
岩陰でいちゃついてた あの夏の匂い
洪水みたいに時の波が
ゆらりゆらり打ち寄せる
水中メガネの向こうで
一人鏡の前で踊る
ゆらりゆらり俄か雨
水中メガネを外せば
見知らぬ女の子